ナラティブ・ベイスト・メディスン(看護部ブログ)

 

 

ナラティブ・ベイスト・メディスン(Narrative Based Medicine)~物語りと対話に基づく医療について~ 

 先日,外来にいらした患者さまとのエピソードを紹介します。

 その患者さまは隣町に住む娘さんと来院されました。来院のきっかけは,お母さまから「頭が痛い,今すぐ来て」と電話をもらったとのこと。患者さまであるお母さまは,後頭部の痛みがあり,いつもと違う感じがして,おかしいなと思う,と話されます。担当医師は,症状の問診を行い,頭部CT,採血を行いました。頭部CTの結果は,特に後頭部あたりの出血や,脳梗塞の跡なども見られず,明らかな異常は見受けられないということでした。採血の結果も,以前にも受けておられた採血結果と,大きな変化は見られませんでした。

 しかし,家族である娘さんはとても心配です。最近,変わったことがありましたか?内服薬の内容が変わりましたか?お食事はきちんとできていますか?と,いろいろお話を伺ってみましたが,あまり変化はないようです。ただ,以前はもっとしっかりしていた母が,最近は少し動作や話が遅くなって,どこかおかしい感じがするんです,と話されます。「転んでもいませんか?」と患者さまに聞くと,「ええ,転んでないです。」娘さんは,「なんだか顔色も,今日は悪い気がして・・」と話されます。確かに,患者さまの顔色は,少し青白く,表情も曇りがちです。

 医師は娘さんに小さな声で言いました。「もしかしたら,ちょっと寂しいんじゃないかな?」一人で暮らしていること,仲のよかった友人が施設に入ってしまったこと,娘さんと離れて暮らしていること,話された生活背景から,少しの痛みが大きく感じたり,軽い認知症により自分で痛みの原因が特定できないことや,日々身体が年齢を重ねていっていることなど,さまざまな要因で不安が募ったことが想像されました。

 ふと,私は患者さまに,まだあまり触れていないことに気が付きました。後頭部を触らせていただきました。「ここです?それともここ?」「あ~,そこ,そこです,押さえたら痛い」転倒によるコブができているわけでもなさそう,でも,後頭部の左側が痛い。「首はどうです?」触ってみます。「いや,痛くない」「じゃあ,肩は?後頭部もちょっと,揉んでみますか?どうですか?」いろいろ痛みの具合を聞きながら,患者さまの後頭部をマッサージしてみます。すると,「あ~,気持ちいい,痛くなくなった」と,おっしゃり,顔色もよくなってきました。先ほどまで,青白く,曇った表情をされていた患者さまは,だんだんと笑顔になり,「楽になった~,ありがとう~」と言ってくださいました。

 

 患者さまお一人おひとり,それぞれ違った症状と表現があり,沢山頂いた情報の中から,患者さまが満足できるケアをさせて頂くには,5感と第6感が大切。そして患者さまのつらい気持ちに共感して寄り添うところからケアは始まり,触れて感じることが大切。多くの患者さまとの出会いは,私たちにとって,大切な一期一会。これからも,もっともっと患者さまのお役に立てるよう,日々の努力をしていきたいと思います。

(看護部ブログ)